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やそうざっき・やちょうざっき

野草雑記・野鳥雑記

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《野草雑記・野鳥雑記(やそうざっき・やちょうざっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,016 字 · 284 頁

青空文庫

享保二十年に成った『備前産物帳』という写本に、ムギウラシ、剖葦鳥ギョギョシのことをいうと出ている。故友島村知章君の『岡山方言』を見ると、現在はムギワラスズメというのが普通で、麦の熟する前に来てヒュヒュヒュカチカチカチと啼くと説明している。熟する前に啼くのでは、麦藁では理に合わないから、多分二百年の間に麦ウラシがこう変化したのであろう。ムギウラシとヨシワラ雀とが融合すれば、こんな形になるのも自然である。ウラスというのは熟させることで、即ちあたかもこの鳥の声に促されては、麦がウレズにいられぬというような昔の民間暦思想の産物とも認められる。しかし若夏の麦漸く黄ばもうという頃に、里近くへ来て啼く鳥は他にも数多い。だから僅かばかり西に離れて芸州の高田郡などに行くと、麦ウラシは即ち雲雀のことであり(郡誌)、今はどうあるか知らぬが対岸の香川県あたりでは、郭公を麦ウラシと呼んでいたことが、蘭山先生の『本草啓蒙』に見えている。もっと異なった例としては、壱岐では梟をムギウマセドリといい、この鳥が啼き始めると麦がウンデ(熟して)来ると伝えている。各地の命名がこのように思い思いで、弘い一致のないということは、たとえ二世紀前の写本に出ておろうとも、やはりその頃の一種の新語であったことを意味するものである。