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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

鼠

一

――あたしおかめなのよ。

と云うのが口癖である。

――あたしおかめなんですってよ。

と自慢そうに云う。まるで褒められたような口ぶりである。

おかめには限らない。なんでも自分のことを云われると嬉しいらしい、母親に、なんてまあ縹緻の悪い子かしら、などと云われても、

――それたあちゃんのこと、あらそう。

などとにこにこするのであった。

松吉姐さんのお出先の一軒で、おちづは使いに来るたびに仲良くなり、暇なときはよく二人で遊ぶようになった。

姐さんの旦那は、いつも初めに此処へ来る。それから洲崎の「升屋」へゆくこともあるが、此処だけで帰ることのほうが多い。「升屋」へゆくときには、姐さんの着替えを手伝うので、今日も旦那の「岡さま」が来ているため、おちづはそこで待っているのであった。

おちづはその料亭がどこよりも好きだった。

「ちづか」というのが自分の名と似ているのがいいし、おかみさんも親切、お民も妹のように可愛かった。

「ちづか」はあまり大きい店ではない、昔は船宿で、岡さまはその当時から贔負にしていたが、主人の仲造が死んだあと、料理茶屋のほうが女手ではやりいいだろうと云って、金を出して呉れたのだそうである。