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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

半日の道づれを捨てるのも、何か名残惜しそうに、一人を減らして四人になった道者たちは、コトン、コトン、と杖の音を淋しくさせて、禅定寺の峠を下りにかかって行く。

虚無僧は、寂然と立って見送っていた。

旅の人の情けはうれしい! しみじみ思うのである。ことに、ああした遍路同士が、貧しい情けをおくりあうことは、泪ぐましいほどで、闘争の巷や富家の門では見られない美しさだと思うのであった。

そして、静かに、道端へ寄って行った。

朽木の根から、滴々と落ちている清水に喉をうるおそうとして、ふと、苔や木の葉に埋もれている道しるべの石をみると、

南――郷の口をへて奈良街道。

北――裏白越え甲賀路。

としてある。

「甲賀……」じっと見つめている虚無僧の胸に、懐古の念が清水のように湧いてきた。「甲賀といえば、甲賀組の発祥地、いうまでもなくお千絵殿の祖先の郷じゃ……」

不思議な心地がするのである。

ゆくりなく、恋人の祖先に巡り会ったような心地がする。そしてそこに、なお道しるべの文字を見入っていた虚無僧は、法月弦之丞なのであった。

弦之丞は、ゆうべ、打出ヶ浜からまっしぐらに立ってきた。