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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
大慈大悲閣
だが、無意識の間にも、足は自然に、暗い道を暗い道をと選っている。
いつになったら明るい道を、明るい気もちが選ぶのだろうか。
悪い渡世の足は洗いました!
そう叫んでいるのに、誓っているのに、世間はそうと信じてくれない。養父が息をひきとる晩も、十手は影身につきまとう。
アア、歩けど歩けど道は暗い。今の足元も遠い先も――。
彼岸のない暗夜行路、それが、終生辿らねばならない自分の生涯だろうか――と、お綱がホッと息をした時、睫毛の涙の光ではなく、ボウとあたりが明るくみえた。
いつか、お綱のいる所は、冷寂とした仏地である。吉原尻から千束をぬけてきたとすれば、そこは多分、浅草の観音堂。
ふり仰ぐと、堂閣の千本廂に、錆びた金色の仏龕が、ほの明るく廻廊を照らしている。
「待って……」
お綱がそこでそういうと、同じように、黙々として、先へ歩いていた万吉は、下駄の緒でも切らしたかと、
「…………」
黙って、向うに立ち止まった。
「万吉さん」
「ウム?」
「ちょっと、待ってくれないか」
「いいとも、ゆっくり休むがいい。俺も旅支度までしているくらいだから、実をいうと、肚の中じゃ先をあせっているんだが、こう夜が更けちゃしようがねえ。