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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

旅川周馬

旅川周馬

「ではお千絵様、エエ違った! お綱さん。どういう話か知らないが、お前のほうの相談はいずれ場所を改めて、ゆっくり聞くとしようじゃないか」

「そう、では妻恋の私の家へ」

「日を改めて訪ねましょう」

「必ずね。固く約束しましたよ」

「万吉、義理は固いつもりです」

「ああ、それは私も見込んでいる……掏摸と目明し、オランダ骨牌で結べましたね」

「一つ仲好くやりましょうぜ」

「え、待っていますよ」と、お綱は蠱惑にニッコリ笑って、すうと障子を閉めかけた。

驚いたのは目明し万吉。尋ねてきた者は尋ね当てないで、尋ねもしないお綱から口約束を取られた上に、窓を閉められてしまっては、虻蜂とらずな訳である。

「オット!」と、あわてて背伸びをした。

「こう、お綱さん、自分の用だけはすんだからといって、俺の頼みをきいてくれねえのは酷過ぎるだろう」

「オヤ、何か私にも頼みがあるの?」

「あるからこそ、かりそめにも、目明したる者の万吉が、チボのお前と手を握ろうというんじゃねえか」

「ほんに、これはわたしが現金過ぎたね。なるほど誰かがいったっけ……。恋飛脚の梅川にしろ、河庄の小春にしろ、月夜の風邪をひいた女は、他人の都合はお構いなしで、みんな自分だけの世間のように、勝手な気持ちになるものだって」