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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
裸火
「お船蔵の外にあたるではないか」
「白状しますが、実は、仲間部屋や船番の下ッ端が、こッそり夜遊びに出る抜け道が一つあるんで」
「よしッ、そこへやれ」
「合点です!」意気込んだ宅助、三角洲を右に見て、腕ッ限りグングンと櫓を撓める。
この一伍一什を、源内の所から帰りがけに、ふと見かけてつけて来たのは、法月弦之丞であった。やや暫し、芦の洲に半身を没して、じっと行手を見定めていたが、何思ったか、俄かに芦を掻き分けて走りだした。
裸火
芦の深みに隠されて、苫をかぶった一艘の軽舸がある。ザワザワと掻き分けてきた弦之丞、苫をはねのけてそれへ跳び移り、早くも砂を崩して川底から離れだした。
退き汐時か水脚の迅いこと、満々たる大河へのぞんで、舟は見る間に木の葉流し――。
彼方の川面を水明りに透かしてみると、さきに陸を離れた啓之助の舟、櫓韻かすかに、今しも三角洲の先から舳を曲げて、春日出の岸へと真一文字に漕ぎ急いで行く。
「おお、案に違わず……だが女をかどわかして、どこから屋敷内へ運びこむつもり? ……どうして阿波へつれ行くつもり? うむ、ことによると阿州屋敷にも隠し道が」
流れに任せた軽舸の中では、法月弦之丞の目と手足、その時怖ろしく迅速に働いていた。