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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
生人形
「いつも命がけの渡世だからね。そして、お前のご亭主は、何という人だったかしら?」
「万吉と申しまして、仲間受けだけはよい人なのでございますが」
「あ、万吉? その人ならツイこのあいだ、私が大津で逢ったばかり」
「えっ、お米様、じゃ万吉は、あの、無事でおりましたか……」お吉は、観世音の霊験にでも会ったように胸をおどらせて問いつめた。
ピタ――と草履の音が止った。四、五間先の砂利置場の蔭、そこから、じっとこっちをみつめたのは、この辺りに下屋敷のある蜂須賀家の森啓之助――例の素迅い仲間の宅助を後ろにつれて。
生人形
「出るよウ」
船頭の声に急かれて、渡舟の桟橋へドタドタと人の跫音がなだれていった。
お米との立ち話で、良人の万吉が大津の半斎の所へ立ち寄り、その足で江戸へ向ったと聞いたお吉は、わずかの消息にでも、ほっとした嬉しさを感じたが、渡舟の出るのに気忙しく、
「じゃお米様、いずれまたゆるりとお目にかかります」
いそいそと駈けだして、船の上からもう一度頭を下げた。
「お嬢様、こッちへ隠れておいでなさいませ」
「あれ、なぜだい、お藤」
「でも、これで渡舟をやり過ごすのが、幾度目だか分りませんもの。