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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「得たり賢し、飲みましょう!」常に無聊な食客の三位卿、こういう晩は大好きである。

阿波守もそろそろ微醺をおびてきた。

「おお酔おうぞ、謡おうぞ」

「舞いましょう! 何なりと」

「よかろう。鼓を――」と、すぐに侍女の手から受けて、阿波守が緒を締めるのを、

「いけません」

と、三位卿が横から奪った。

「小鼓はかくなん申す有村、大倉流の鍛えを以て打ちまする。舞人は殿、いざ――」

「では舞おうか! 鳴門舞!」

「一だんと見ものでござろう、阿波守殿の鳴門舞――」と、七条卿、梅渓卿、交野卿、みないい色になってやんやと興がる。

「侍女どもも見ておけや」

襖際に居並んでいる奥仕えの女たち、ホホと笑んで珍しい殿の舞振りに眼をあつめた。

「打てや三位卿、秘蔵の小鼓撫子を――」

「あっ」と有村は容を正してポーン! 打ったり、撫子!

津の名人大倉六蔵、それには及びもないけれど、どうやら居候の芸達者。

ポン、ポン! ……音冴えをみすまして阿波守、白足袋の爪さき静かに辷り出る……。

「おおウ鳴門、大鳴門!」

舞えば三卿も声について、それに合せて謡いだした。

「大――鳴門! 大鳴門!」

「濁世無限の底に鳴るウ――大鳴門! 大鳴門!」