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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「どうかして殺したい! 手を砕いても、きゃつを亡きものにせねばならぬ」

「ウーム、そうか! 相手が法月弦之丞なら、この孫兵衛も手を貸してやろう」

「そうだろう、イヤ、そう来なければならぬ筈だ。あいつに息がある間は、一生涯、脅かされていなければならぬ、この周馬と同様に、貴様にとってもお綱の恋仇、頼まれないでも、急に殺したくなってきたに違いない」

「そうならそうと、最初から相手の名をいえば、おれだって、こんな刀は抜きゃあしねえ」

と、孫兵衛は助広を鞘に戻して、

「だが、お前の恋仇とは初耳だ。一体、そっちの恨みという事情は……?」

「それは一朝一夕に話せぬが、つまるところ、お千絵という世阿弥の娘も、弦之丞に思いをよせて、あいつに逢うのを一念で待っているのだ」

「そのお千絵に、お前が嫌われているという筋か」

「ちょうど、お身がお綱に嫌われているごとく」

「エエ、口が減らねえ。だが、弦之丞という奴は、どこまで女に果報のある奴だろう」

「だから殺してしまうがいい」

「して、今の居所は?」

「あしたは江戸へ着くという所を、たしかに、拙者がつきとめている」

法月弦之丞が江戸へ帰る!

これは、旅川周馬にとって、まことに、由々しい脅威である。