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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「おお! 駿河台と聞いちゃア……」内ぶところへ手を入れて、ギュッと晒の腹巻をしめ、帯もしっかりと後ろへ廻す。

火事が近いと聞いて、泣きだしそうになった角兵衛獅子のお三輪と乙吉は、やさしい言葉をかけてくれた、万吉の側を離れたくないように、

「おじさん――」

と、寄りついて、頭の鶏毛を寒そうにそよがせ、歯をガタガタと鳴らしている。

一番鐘をついた見附のすり鐘に合せて、やがて遠く、両国のやぐらや鳥越あたりのお火の見でも、コーン、コーンと、冴えた二ツ鐘をひびかせてきた。

自身番から板木が廻る。ドーン、ドーンと、裏通りを打ってくる番太郎の太鼓報らせ。

万吉の胸も、早鐘を打ってきた。

「ええ、こうしちゃアおられねえ!」

吾を忘れて走りだすと、腰につかまっていたお獅子の乙吉が、日和下駄を引ッくり返して、そこへ転び、ワーッと、大声で泣きだした。

「あッ、堪忍しなよ!」

ふりかえったが、万吉は、戻ろうとはしなかった。と、

「だ、だんなッ――」と呼び返したのは飯屋の亭主。

「おお、違えねえ、勘定か」

屑屋の資本の縞の財布を、首からはずして、紐ぐるみ、クルクルと巻いたかと思うと、万吉は、それをポーンとほうってやって、