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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「この路傍では、何かの話もなりかねる。一月寺の宿院はすぐこの先じゃ、そこへ落ちついてきこうから、私の後についてまいるがいい」
「へい、それじゃそこへまいりましてから」
「万吉さん、私は? ……」お綱は少し甘えるように、万吉の袂を取ってはにかんだ。
「二人ともに来るがよい」
笠でさしまねいて弦之丞が、先に立って歩きだしたので、お綱の心は甘い喜びにとけそうだった。宿院へ来いとゆるされただけを、もうすべてのことのように思って――。
そして、前へゆく弦之丞の後ろ姿に、磁力のような愛執を感じながら、足も心もその人へ引きずられて行く見返りお綱。
「私は……私は……」お綱はついて歩く足もともうつろに、めくるめくばかりな熱情でこう思った。
「死んでもこの人を忘れまい! 命がけでこの人の胸にすがろう……、そしたら、怖ろしい掏摸の足もきッと洗える」
するとその時、屏風坂の辺から近道をして追いついてきたのであろう。こけつ転びつ――声を揚げて追いついてきた角兵衛獅子のお三輪と乙吉。
「姉ちゃん! ……姉ちゃん!」
「姉ちゃん、待ッて――」
なかば、必死の泣き声で呼び止めた。
「姉ちゃアん! ――」