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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

どこにというと、それが少しおかしい。

鵜の目鷹の目の捕手や、六尺棒をもってつきあいに出た番太郎が、みすみす二度も三度も前を通っている、横丁の銭湯へ七文の湯銭を払って、そこの女湯に、のびのびとして温まっている。

もうもうと白い湯気が立ちこめて、数多の女の肌が人魚のように混んでいるので、誰が誰とも分らないが、風呂へつかって、

「ああ、いいお湯加減……」

こういったのがお綱らしい。

「ええ、人参湯でございますからね」と、乳呑み児を抱えた、近所の若いお内儀さんらしいのが話しかける。

「お子さんがあると、お風呂もたいていじゃありませんね」

「まったくですよ。それに冬は、風邪をひかしてはと思うもんですから、自分の体も洗えやしません」

「少し、抱っこしていてあげましょうか」

「いいえ、いいんですよ」

その時、番台の側の戸が開いた。

向うからもこっちからも、湯気でよく見えないからいいようなものの、いきなり女湯の戸を開けたのは、一人の男だ。

「あ、お間違いでしょう」

と番台がいうと、かぶりを振って、下から、何かささやいた。と、みるまに番台のおやじ、青くなってざくろ口の湯気を見つめた。