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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「えっ、親分? ……」多市はポッカリ眼を開いた。起き上がろうとするのを、銀五郎がそっとおさえて、その顔を覗きこんだ。

「多市、気がついたか。俺だ、銀五郎だ……」

「おッ。親分」と、細い手を絡ませて、上眼にじっと見ていたかと思うと、その瞼からポロポロと男泣きの熱い泪……。

「無理に体を動かしちゃいけねえ、じっとしていろ、もう俺が戻ってきたからには心配はない」

「親分、わっしの傷は助かりません。助かろうとも思いません……ただ心がかりだったのは、親分が先へ多度津へ渡ってしまい、わっしがこうなったことも知らずにいると、飛んだ手違いになると思いまして、そいつが気になって気になって……」

「うむ、お千絵様の手紙のことか」

「そうです。すみませんが親分、多市はもう駄目ですから、わっしに構わず、もう一度江戸表へ帰って、お千絵様に事情を話し、誰かほかの乾分を連れて阿波へお立ちなすッて下さい」

「馬鹿をいっちゃいけねえ」

励ますつもりで銀五郎は、わざと語気を強くする。

「そんな弱気でどうするものか。てめえの気性を見込んだからこそ、今度の旅にも連れてきたのじゃねえか。それも只とは違って、甲賀家の浮沈とお千絵様の一身にかかわる大事なお使いだ」