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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

悪かったかい」

「なんだと」

「お前みたいな素人仕事に、あの二人はもったいない。どこか、河岸を代えたらいいでしょう」

「ウーム……、じゃてめえもあれをつけてきたのか」

「それもおまけに江戸からだよ。双六にしたって五十三次、根よくここまでつけてきたところを、横からさらわれて埋まるかどうか、胸に手を当てて考えてごらん」

「読めた、さては道中騙りか美人局の」

「いいえ、これでも一本立ち、お前さんも稼業人になるなら覚えておおき、女掏摸の見返りお綱というものさ」

「あっ、お綱か」

「おや、わたしを知ってるの」

「一昨年江戸へ行った時、二、三度落ち合ったことのあるお十夜孫兵衛だ」

「まあ……」笑いまじりに寄ってきて、「それじゃ少し啖呵が過ぎたね、早くいってくれりゃあいいのに」

「なアに、こっちがドジを踏み過ぎている。それにしても、たいそう遠出をしてきたものだな」

「ちっと仕事が大きいのでネ」

「たしかに見込みはついているのか」

「お蔑みだよ、お綱さんを」

話してみると、ぞんざい口も、罪がなくって艶かしくって、どこやら、国貞うつしという肌合。この美しさが、剃刀の折れを指に挟んで働くとは、目の前にいるお十夜にも、思えば不思議な気にされる。