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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

ヒラリと戸外へさして帰ってしまった。

「お客様、ごめんなさいませ……」女中はすぐに、その札を持って奥の客間をさし覗く。

二間のうち一間のほうには、お十夜孫兵衛、宿酔でもしたのか、蒼味のある顔を枕につけ、もう午頃だというに昏々と熟睡している。

「おや、まだおやすみでございますか」

「いいえ……」中仕切の向うからお綱の声がした。お綱はすッかり朝化粧まですまして、服もきちんとできていた。

「お連れ様は、たいそうよくお寝りでございますね、おや、朝飯もあがっていらッしゃいませんようで」

「そッとしておいて下さいな。昨夜少し持病が起きて苦しんだところですから……、なアにこの分で、夕方までグッスリ寝ていれば、気分がよくなりますから心配しないで」

「はい。それからお客様……ただいま下へ、旅のお方が見えまして、これを渡してくれとおっしゃいましたが……」女中は、べんけい縞の男からいわれた通りの言伝を添えて、きれいな模様のある札をお綱の前へさし置いた。

「えっ、これを誰かが届けてきたって? ……」

お綱は畳の上へ眼をみはった。その一枚は、まぎれもない和蘭陀カルタの一枚である。

走井の近くで拾ったといえば、送ってきた舞妓たちが、あの茶店先でもてあそんでいたから、その一枚が往来へ散ったのであろう――それに不思議はない、しかし、この一枚のカルタ