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どようふじん

土曜夫人

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 頁

青空文庫

兄ちゃん

一

その人の所へ行って、あの写真機はうちに預けた品やということにしてくれと、姉ちゃんから説き伏せてくれたらそれでええやないの」

「ふーん。でも、その人うんと言ってくれるかな」

「ええおっちゃんやさかい、うちを助けてくれはるやろ。一寸こわい所あるけど、親切な人やさかい。うち、今でも、あの人の写真機盗んだこと後悔してるねン」

「どこにいる人……?」

「行ってくれはる……?」

「それより、どこにいる人なの、それを先に……」

言ってごらんと、一寸せきこむと、チマ子は場所をまず言って、

「木崎さんという人……」

「木崎……?」

ルミから貰った名刺の「木崎三郎」の明朝の活字が、ぱっと陽子の頭に閃いた。

「ねえ、行ってくれはる……?」

「行くわ。で、その写真機は……?」

「サツ(警察)で夜明ししてる! 売れば一万五千円の新円のサツやけどな」

チマ子は吐き捨てるように言った。

兄ちゃん

一

頽廃の一夜が明けて、日曜日の朝が来た。

ただでさえ頽廃の町である。ことに土曜日の京都は、沼の底に妖しく光る夜光虫の青白い光のような夜が、悪の華の巷にひらいて、数々のいまわしい出来事が、頽廃のメシベから放つ毒々しい花粉の色に染まる――というこの形容は誇張であろうか。