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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 頁
三
坂野にもそれと感づかれそうになっていたのだ。
そのお腹の子のことがあるから、きらわれても、とにかくもう一度銀ちゃんに会わねばならない。が、銀ちゃんはどこにいるのだろう。アパートへ電話してみたが、むろんいなかった。半泣きの顔で、ふっと入口の方を見た途端、芳子ははっとした。京吉がはいって来たのだ。悪いところを見つけられたように、芳子はあわてて顔をそむけた。
が、京吉はむろん芳子に気がついた。
「ははアん」
セントルイスから祇園荘へ電話が掛った時の、銀ちゃんの狼狽ぶりが想い出された。京吉はわざと芳子には顔を向けて、両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、くわえた煙草を、舌の先でペッと吐き捨てると、
「ひでえキャッキャッだ!」
そのキャッキャッという言葉をきくと、芳子は何思ったか、急に起ち上って、京吉の傍へ来た。
三
「京ちゃん、あんた……」
芳子はちょっと言いにくそうに、
「――元橋さんの居所知らない……?」
「元橋さん……? そんな男……」
知るもんか、おれきいたこともねえよ――と、銀ちゃんの本名を知らない京吉は、寄ってきた芳子へ、わざとらしい背中を向けて、そしてカラ子とうなずき合った眼を、ちらとスリの方へ光らせていた。