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どようふじん

土曜夫人

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 頁

青空文庫

三

「あ、うつされる!」

と、ぎょっとしたように、いきなりそむけた顔が、みるみる青ざめた。

「失礼します」

陽子は客からはなれて、木崎の方へ行こうとした――その途端、茉莉が倒れたのだ。

写真も気になったが、それよりも茉莉のことが……。ちょっと迷ったが、やはり陽子は人ごみの間をすり抜けて、茉莉の方へかけよった。

茉莉の顔は、青ざめた陽子よりも、血の色がなかった。頬紅の色まで青く変っていた。

そして、口から泡をふき出して、床の上を蛭のようにかすかにうごめいている――その傍に、青年がキョトンと突っ立っていた。

三

「あ、京ちゃん」

茉莉の倒れている傍に、突っ立ってキョトンとしている青年の顔を見ると、陽子は茉莉よりもその青年に声を掛けた。

十番館では「京ちゃん」で通っている京吉という二十三の青年だった。

京吉はどこのホールでも、チケットなしで踊れた。

天才的にダンスが巧いのだ。ダンス教師も京吉のステップを見ていると、自分が情なくなるくらいだった。京吉の相手をしたダンサーは、慾も得も商売気も、そして憂さも忘れて――いや自分を見失ってしまうくらい、うっとりと甘くしびれるのだった。