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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 頁
女の構図
一
女の構図
一
キャバレエ十番館の裏は、西木屋町に面し、高瀬川が流れた。
高瀬川は溝のように細い。が、さすがに川風はあり、ふと忍びよる秋のけはいを、枝垂れた柳の葉先へ吹き送って、街燈の暈のまわりに夜が更けた。
しかし、十番館のホールではまだ夏の宵だった。
裳裾のようにパッとひらいた頽廃の夜が、葉鶏頭の花にも似た強烈な色彩に揺れて、イヴニングドレスの背中をくりぬいて見せた白い素肌が、蛇のようにくねると、そのくぼみに汗が汗ばみ、女の体臭を男の体臭が絞り出すような夏の夜の踊りに、体の固い若いダンサーのステップもいつか粘るのだった……。
そんなホールの中へ、こおろぎが一匹、何にあこがれたのか、さまよい込んで、ピョンとはねた途端、クイックターンのダンスシューズの先に蹴られて、チリチリと哀れな鳴き声のまま、息絶えたが、その声はバンドの騒音に消されて、たれも気がつかなかった。
木崎三郎も気がつかなかった。
木崎は肉眼がカメラのレンズに化してしまったかと、思われるくらい、視覚神経の病的に鋭いカメラマンであり、ことにグラフ雑誌から頼まれたダンスホール風景の写真を撮りに、三晩もつづけて十番館へ足を運んでいるのだから、ホールの床の上のこおろぎという構図には敏感に神経が動く筈だのに、やはり見逃してしまったのは、丁度その時、木崎は二