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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 頁
四
だから、みんな京吉と踊りたがった。
「チケットを倍にして返すから、あたしと踊ってよ。ねえ、京ちゃん、明日来て、あたしと踊ってよ」
と、頼む女もあった。京吉となら、チケットを貰うのが済まないというのであろう。
その京吉と、茉莉は今夜踊っていたのだ。
――と、陽子は思い出して、
「どうしたの、一体……」
と、せきこんで、たずねた。
「う……?」
京吉はちらと陽子の顔を見た。
「あんた、茉莉と……」
踊ってたんでしょう――と、あとは眼できいたが、京吉は答えず、不機嫌な唇を結んで、キョトンとした眼で、茉莉を見下ろしていた。
繋ぎ提灯の、ピンク、ブルウ、レモンエローの灯りが、ホールの中を染めていた。
が、茉莉の顔はその色に染まりながら、いや、そのために一層、みるみる蝋色の不気味さに変って行くのが、判るようだった。
苦しそうだ……。
四
口からふき出している泡の間から、だらんと垂れた舌の先が見え、――茉莉はかすかに唸っていた。
バンドは間抜けた調子で、誰も踊っていないホールへ相変らずクンパルシータの曲を送っていたので、茉莉のうめき声は、ともすればその音に消されたが、苦しそうにうめいていることだけは、さすがに風のように陽子の耳には判った。