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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

人間が畜類の下におかれた受難期である。

いま、元禄十四年は、その発令から十年めにあたっていたが、まだ人間は、その法に、馴れきれなかった。

猫に石を打つけた、鼠を河へ捨てた、蛇の黒焼をかくれて服んだ、雀の巣を落した、うなぎの蒲焼を密売した、病馬に薬をのませなかった、犬医者に奉公するのを嫌がった――無数の罪科罪名によって、立法以来、今にいたるまで、都下全国にわたって、一日何百人という人間の打首、遠島、入牢、重追放が科せられない日はなかった。

「いったい、蚊をいぶしたり、たたいたりは、どうなるんだい?」

「きまってら。いぶしたやつは、松葉いぶし。たたいたやつは、百叩きよ」

「じゃあ、蚤もつぶせねえの」

「そうさ。へたに蛍やきりぎりすなんぞ飼うと、永牢だろうよ」

江戸の庶民は、法の重圧や、疾苦を、こんな冗戯や洒落でまぎらす術のみ知って、「なぜ人間が」とは考えなかった。

そして、落首や戯れ絵で小さな反逆の中に遊びながら、犬を、犬と呼び捨てにせず、「お犬さま」と敬称するのを忘れなかった。

幕府も、お犬さまは、諸生類の最上級において、禁令条項のうちでも、特別に犬は重視した。