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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
同苦さまのような上人がもし十人も世間にいたら、どんなに世の中が明るくなるかもしれやしません」
それから、老番頭はまた、自分が知るかぎりの、同苦坊と師鉄眼との、因縁やら、逸事やら、人間愛に富んだいろんな見聞ばなしをして聞かせた。
市十郎はただ鞭打たれるように聞いていた。
「どれ、行こうか。またみんなが待ちかねていよう……」
やがて、同苦坊が出て来た。かれの姿を見、市十郎は、こんどは自分が車の梶を持った。同苦は、黙って、後を押した。
荷車を曳いたのは初めてだし、米俵は、重量がある。市十郎は、よろよろしてばかりいた。しかし同苦坊は、代ってやろうともいわない。
やッと、蔵前へもどり着いた。――
前の夜にも増して、附近の浮浪者が、真ッ黒に寄っていた。そして、薪を積み、釜下を築き、火をつけるばかりにして待っていた。
「お上人さんが来た」
「お上人さんが見えた」
子どもらが、慈父の姿を見たように、浮浪者たちは、彼を迎え、山と降ろされた俵をながめて、
「お上人さんは、どうして、どこから、こんなに米を持ってくるのだい?」
と、よろこびと、怪しみと、それが大勢なので、歓呼の声みたいに聞こえた。