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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
由来、北と南とは、唇歯の関係にあるわけだが、内実では、どうしても対立的になった。
一つ都府に、二人の警視総監がいるのである。しかも大江戸といううるさい人種の中なので、勢い競争意識に駆られないわけにゆかない。それに揶揄、批判、諷刺などの得意な観察と表現をもって拍車をかけることは、ここの小市民たちがもっとも好むところのものだ。がただし、江戸人士は、悪罵や皮肉は呈しても、めったに讃辞を送らない。殊にかれらは常に反官的であり、武士階級への反感がその底意となっている。
そこで、大岡越前が、南にすわると、たちまち、
(こんどの南町奉行は、新将軍のお目がねで、山田奉行から御抜擢になった、えら者だそうだ。北の中山出雲守とはいい取組み、何か今にやるだろうぜ)
巷の声は、すぐそれを期待した。北の奉行組も、巷の声に刺戟されて、
(何の、田舎出の奉行ごときに)
と、例に依って、対立意識を燃やしたのはいうまでもない。それかあらぬか、昨夏以来、北の鬼与力や三十手の面々は、俄然、腕によりをかけて征悪活動を展開し、その検挙数は、ここ何年にもない目ざましさといわれた。
――で。今夜の、伊勢町の五人組強盗の突発にも。