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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

いつもの場所

が、ふたりには、見えもしなかった。

「ウーム……そうか」と、越前守は、頸の毛が二人に見えるほど深くさし俯向いた。――沈思、ややしばらくの後、こういい渡した。

「……ま、いずれにせよ、市川楽翁、逃げかくれする者ではない。明朝、ふたたび両名して、柳町のかれの自宅を訪れ、先刻、義平太に申しつけた通りにいたして来い。――印籠を差出さすとも、召捕って参るとも」

「かしこまりました」

義平太も初めて、勘蔵と一しょに答えた。

ここずッと、毎夜のように、越前守が公務から解かれることは遅かったが、今夜もまた、もう更け沈んだ時刻だった。かれは、二人の部下にも、夜ごとの労を詫びて、自身もやっと駕籠に移り、間もなく赤坂の私邸へ帰って行った。

いつもの場所

「お次さん。……お次さん」

差入れ茶屋は、夕がた、奉行所の門が閉まるのと一しょに、ここもみな、葭簀を巻き、床几を積み、表戸は、閉じてしまうのが慣いである。

だが、名物石焼豆腐の裏口には、明りが洩れていた。――そこの戸を軽く叩いていたのは、今、奉行所の裏門際で、義平太や勘蔵と別れて来たばかりの、山本左右太だった。

「……お次さん。