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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

もしふたりの恋が、禍いされるならば、それは二人の心が弱いからだ。恋は二人次第のもの……。お次さんも、しっかりせい。いいか」

「左右太さま。……うれしい。ほんとに、そう思って、ようございますか」

「ただ、弱ったことには、島破りの女掏摸が、奉行所のすぐ鼻っ先に、隠れているということを、与力の左右太が知ったことだ。――これは、捨ててはおけない。恋のために、見て見ぬ振りをしていたら、おれはお奉行が今、一身を賭しておられる御精神を裏切り、二人の友をも、欺くことになる。どうしても、捨ておかれぬ」

「では、どうしましょう。……どうなさるおつもりですか」

「お島を、召捕るだけのことだ」

「えっ……」お次は、そんな結果を、予想もしていなかったように、急に、唇のいろを失ってふるえた。

すると、船小屋の横から堤の上へ、たれか、人の足音がして行った。ふと、耳にとめた左右太が、オヤと、お次の胸をつき放して、伸び上がってみると、油けのない水髪のぞんざい結びに、横櫛をさした女が、流し眼に、下を振り向いて、にこと、夕顔のように笑った。

「あっ……。姉さん」

「なに、お島か」

左右太が、堤へ、駈け上がろうとすると、お次は、われを忘れて、かれの腕に、しがみついた。