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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

「禅師。……白洲へのぞむ前に、何か、越前へ一言、御叱咤を下さいませ」

弟子が、師へ求めるように、越前守は、謙虚にいった。

「はははは。お奉行、何を仰っしゃる。あんたは、江戸町奉行じゃないか」

同苦坊は、燭が揺れるほど笑った。

いや同苦坊というのは、かれの遠いむかしの名であり、今では、宇治黄檗山の一院の住持で鉄淵禅師と称ばれていた。

十数年前、年ごとに、江戸の窮民の群れの中に姿をあらわして、大釜に粥を焚き、無数の飢えを救って、浮浪者たちから慕われていた彼も――例の犬公方の悪政がやんだ頃から、いつともなく、その便りを絶っていた。

けれど、あの折、路傍の一機縁から、かれの喝棒を食って、今日の更生を得た大岡市十郎――いまの越前守は、その後も、文通の上で、正覚の道をたずね、身は市井の公吏と劇務の中にあっても、心は在家の居士、鉄淵の弟子として、つねに音信を欠かさなかった。

ところが、この鉄淵は、先師鉄眼の遺業である開版大蔵経の恒久的な保存法を朝廷や幕府の援護にも、仰ぐため、京都にゆき、次いで江戸表に出て、要路の人々を説きあるいていた。

そして、老中、若年寄などを歴訪しているうち、寺社奉行の本多伊予守から、