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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁
武蔵は相かわらず黙々と足をすすめているだけであった。振り顧っても、もう小茶ちゃんの姿が見えないので、城太郎も悄ンぼりと従いてゆくほかはない。
やがて武蔵から、
「まだか?」
「何処」
「小柳生城の大手門は」
「お城へ行くの」
「うむ」
「今夜はお城で泊るのかい」
「どうなるか、わからんが」
「もうそこだよ、大手門は」
「ここか」
ぴたと、足を揃えて、武蔵は立ちどまった。
苔につつまれた石垣と柵の上に、巨木の林が海のように鳴っていた。そこの真っ暗な多門型の石塀のかげに、ポチと、四角な窓から明りが洩れている。
声をかけると、番士が出て来た。庄田喜左衛門からの書面を見せ、
「お招きによって罷り越した宮本と申す者でござる。――お取次を」
番士は、もう今夜の客を知っていた。取次ぐまでもなく、
「お待ちかねでござる、どうぞ」
と、先に立って、外曲輪の新陰堂へ、客を導いて行った。
三
ここの新陰堂は、城内に住む子弟たちが儒学を受ける講堂でもあり、また藩の文庫でもあるらしく奥へゆく通路の廊架側には、どの室にも、壁いっぱい書物の棚が見うけられる。
「柳生家といえば、武名だけで鳴っているが、武ばかりではないと見える」