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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

六郎は不思議な曲者を執り逃しては恥辱だと思ったので、いきなり腰の刀を抜いて斬りさげようとしたが、距離ができると思ったので、思い直して背のあたりと思う処を覘って突いた。女姿の者は唸り声をだしたが、それ以外には何も云わなかった。六郎は曲物が斃れるだろうと思ったが、曲者は斃れないで猶も逃げ走ろうとした。

六郎はあわてて二度目の刀で突いた。と、女姿の者のかむっていた被衣が落ちた。

「無礼者」

それは聞き覚えのある声であった。六郎はその声を聞くとともに、眼前がくらむようになって立ち縮んだ。そして、気が注いて恐る恐る眼をやった時、南縁の雨戸の締る音がして、曲者の姿はもう見えないで、被衣のみが沙の上にふわりと落ちていた。

無礼者、六郎の耳にはその声がまた甦って来た。その声はどうしても聞き覚えのある右大将家の声であったが、しかし、それにしても右大将家ともあろう者が、何故に女房の被衣などを着て、しかも、夜陰に曲者のように南縁の雨戸を開けて戸外へ出るだろう、右大将家が決してこんなことをするはずがない。はずはないが声はどうしても右大将家の声であった。もし右大将家としたなれば、己は主君に二刀まで傷を負わしたから、不忠不義の極悪人となって死なねばならぬ、それも己一人死ぬるなら好いが、父をはじめ一家一門にもその咎めがかかって、人に羨ま