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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

彼は六時出帆の船を待つ処をまだはっきりと定めていなかったので、すぐどこかで一杯やりながらそれを待とうと思いだした。彼は既に十里手前の町で船室を定め、一切の荷物も積んで、着たままの洋服に籐のステッキ一本と云う身軽な自由な体になっていたので、身のまわりのことに就いては気になることはなかった。彼はちょっと左の手をあげて手首に着けている時計に眼をやった。時計は三時を過ぎたばかりであった。六時までにはまだ三時間ある、二時間はどこにゆっくりしていても宜いと思った。彼はどこか入るに宜い簡単な処はないかとむこうの方に眼をやった。すぐ右側に赤いポストの立っている処があって、そこから横街の入口が見え、そのむこう角になった処に黄な覆を垂らした洋食屋らしい店があった。

洋食ではいけない、なるべくなら日本料理が宜いが、日本料理はないだろうかと思った。しかし、それは絶対に洋食が厭と云うでもなかった。彼は洋食と云っても魚のフライ位は出来るだろうと思った。彼はもうその洋食屋の前へ往っていた。

もうすこし前へ往ってみたら何かあるかも判らないと思った。彼はちょと足を止めて、前へ往こうか入ろうかと考えたが、ぐずぐずしていて時間が経ってはつまらないと思いだした。