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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
謙作はそれがあの女であろうと思ったので、その方へ歩いて往った。それはたしかに彼の女であった。
「ようこそ」
「失礼します」
謙作は曖昧な返事をしながらちょと頭をさげるようにした。
「ひどい処でございますわ、さあどうぞ」
「失礼」
謙作は中へ入った。雲母のようにぎらぎら光る衝立が立っているので、それを左によけて通った。そこは室の中程に角なテーブルを据えて、薔薇のような花の咲いた鉢をのっけ、そのまわりに真紅な天鵞絨を張った椅子や安楽椅子を置いてあった。窓のほうには緑色のカーテンが垂れていた。その窓の下にも真紅な天鵞絨を張った寝椅子をはじめ種種の椅子がに置いてあった。
謙作はそれを見ると外套を脱がなくてはすまないように思った。彼は帽子掛けはあるまいかと思って左の方に注意した。三段になった小さな棚がそこにあった。彼はその傍へ往って下の段にステッキと帽子を置き、それから外套を脱ぎかけた。ふわりとした暖かい手が背後にあった。
「おとりいたしましょう」
外套はそのままするりと脱がされてしまった。謙作はきまりがわるかった。
「これはどうも」
「では、どうかおかけくださいまし」