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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
「それにしてもたしかに、声は婦人だと思いますが」
「さればさ」
怪しい女の悲鳴がまた起った。人びとは鳴を沈めた。
「……板女、……板女」
それはそこから北の方でしているのであった。人びとはまたその方へ駈けだした。葉の落ちた桐の木が骨ばって立っている畑の奥にある家屋があった。怪しい声はたしかにその家らしかった。人びとはその家へ雪崩れて往った。もう五十あまりの頭数が月の光に浮いていた。
長刀を小脇にした壮い妻女が庭の潜りを開けて出て来たところであった。
「如何なされた」
一番に入って往った妻女と見知り越の男が云った。と、妻女は立ち停って、その顔を月に透して見た。
「おお、山上様……、今手前方の書院の庭で、怪しい女の叫び声がいたしましたから、庭に出たところでございます」
女の悲鳴がまた聞えた。
藤枝と云う鰥暮の侍は己の家へ帰って来た。彼は四五箇処ばかり怪しい悲鳴を追っかけたが、とうとうその正体を見とどけることができなかったので、ばからしくもあれば腹だたしくもなって、いっしょに駈けまわっていた人びとがまだ最後の家の前で話しあっているにもかかわらず、一人で疲労れた足をひきずって帰ったのであった。