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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

空地に向った右側は魚屋になって、店には鮟鱇を釣し、台板の上には小鯛、海老、蟹。入口には蛤仔や文蛤の笊を置いてあった。そこには藻のむれるような海岸特有の匂があった。

広巳はふと何か考えこんだ。七八人の少年がどこからか出て来た。玩具の洋刀を持ち海老しびの竹屑を持った少年の群は、そこで戦ごっこをはじめた。

「俺は東郷大将だぞ、ロスケに負けるものかい」

「汝はクロバトキンだろう」

「やっつけろ、クロバトキンをやっつけろ」

それは日露戦役の直後で、当時の少年の何人もが東郷大将を夢みている時であった。広巳は足をとめた。

「東郷大将、うう、東郷大将か」物の影を追うようにして、「沙河の戦は、面白かったなあ、俺もあの時、鵜沢連隊長殿と戦死するところだった」

少年の群はその時鯨波をあげて右側の路地の中に入って往った。広巳は気が注いた。

「東郷大将は、もう往っちゃったのか、東郷大将は」淋しそうに笑って、「俺もなあ、あの時鵜沢連隊長殿と戦死してたらなあ」

広巳は歩きだした。広巳の眼の前には落寞とした世界がひろがっていた。

「これが日露戦争の勇士か」

右側に嫩葉をつけた欅の大木が一団となっているところがあった。