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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

そこは八幡宮の境内であった。広巳はそこへ入った。華表のしたに風船玉売の老婆がいた。広巳は見むきもしないで華表を潜った。欅の嫩葉に彩られた境内は静であった。右側の社務所の前には一人の老人が黙もくと箒を執っていた。左側に御手洗、金燈籠、石燈籠、狛犬が左右に建ち並んで、それから拝殿の庇の下に喰つくようになって天水桶があった。その天水桶は鋳鉄であった。その右側の天水桶の縁に烏のような水だらけになった一羽の鳥がとまって、それがばさばさと羽ばたきをやっていた。

拝殿の前の金の緒の垂れさがった下には、一人の御隠居様らしい切髪の老媼がこちらへ背を見せて拝んでいた。広巳の眼は烏のような水だらけの鳥へ往った。広巳は鳥の方へ往った。それは鵜であった。長い嘴の上の方の黄ろい古怪な形をした水禽は、境内の左側になった池にでも棲んでいるのか人に恐れなかった。

「なんだ、鵜か」

鵜は羽ばたきをやめなかった。その眼はきろきろと鬼魅悪く光っていた。

「厭な眼をするない」手を揮って、「おい、こら」

鵜はそれでも逃げなかった。汚い天水桶の上には鳥の柔毛が浮んでいた。右の方の横手の入口に近い処に小さな稲荷の祠があって、半纏着の中年の男がその前に蹲んでいた。