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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

老人は箒を中へ入れようとしたが、入れることができなかった。同時にもつれあっていた黒い渦巻が眼の前に倒れた。老人は驚いて一足退った。老人の小さな頭には胡麻塩になった略画の烏そのままの髷が乗っかっていた。

「こ、これは、まあ、なんと云うことだ、狼の噛みあうように」

広巳は双子に帯際に掻きつかれながら、俯伏に倒れた紺の腹掛の上に馬乗になっていた。

「く、く、く」

「う、う、う」

「む、む、む」

「う、う、う」

三人はまた獣のように呻きあった。剥きあっている三人の歯が獣の牙のようにちらちらした。

「何人か来てくれ、何人か来てくれ」

老人はもう己の手ではどうすることもできないとおもった。牡丹か何かの花が咲いたようについと来て立った者があった。

「おや、喧嘩してらっしゃるの」

二十七八に見える面長な色のくっきり白い女であった。黒い筋の細かい髪を目だたないような洋髪にして、微黄ろな地に唐草模様のある質実な羽織を被ているが、どこかに侵されぬ気品があった。老人はどこかの邸の夫人が参詣に来あわしたものだろうと思った。

「ほんとに困っちまいます、私が云ってもだめですから、どうか夫人が」