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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
「何かおぼしめしがあるのか」
耳門が啓いて定七が小さな白木の三宝へ瓦盃を二つ三つ載っけて入って来た。
「定七、塩もいいか」
「よろしゅうございます」
「そうか」
定七は庭の隅の楓の下へ往った。楓は微紅い嫩葉をつけていた。定七はその楓の根元へ三宝を供えて、その前へ蹲んで掌を合せた。
「定七、上を見てみな」
「へい」
定七は腰を延ばして片手を額にかざして梢の方へ眼をやった。
「どうだ」
「神様がお出ましになったから、きっとおつれあいも」
定七は幹から左側の枝へ眼をやった。その左側の枝の中央に一疋の蛇が巻きついていた。
「おう、やっぱり」
「いらっしゃるか」
「いらっしゃいます」
「そうか」
「あらそわれないものでございますよ」
広栄のいる室の背後の襖が啓いて、円髷の肉づきのいい背の高い女が出て来た。それがお高であった。お高は長方形の渋紙に包んだ量ばった物を抱いていた。
「出たのですの」
「そうだよ、お出ましになったのだ」
「どこ」
庭の方へやったお高の眼に、縁側の近くまで来て、それから右の方へ方向をかえている蛇が見えた。
「ああ、そうね」
「ありがたいことだ、もったいない」
「そうね」