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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

「どこへ往ったろうね」

「いたたまれないで、逃げだしたかも判らないよ、前刻居室で新聞かなんか読んでたが、いないのだよ」

「里へ往ったろうかね」

「まさか里へは往かれないよ」

「それじゃ、どこだろう」

「杉本さんじゃないの」

「あの弁護士の杉本さん」

「そうよ、奥さんは、あの杉本さんとも、へんよ」

「まさか」

「ほんとよ、私は見たことがあるもの」

「ほんと」

「ほんとだとも、正月の比よ、旦那がお蔵へ往ってる時に、杉本さんが来て、奥さんの室へ入って、秘密ばなしをして、二人で笑ったりなんかしてたよ」

「そう、そんなことがあったの、ずいぶん、ねえ」

「ずいぶんよ」

その時どかどかと跫音をさして来たものがあった。二人はびっくりして離れ離れになった。広巳が引返して来たところであった。

「ふざけてやがる、こんなべらぼうなことがどこにある」

広巳は壮い婢を見つけた。

「そこで、何をまごまごしてるのだ」

周囲にあるものを蹴ちらすような勢で入って来て、瓶子の傍へ往くなりいきなり瓶子を執って、それを口からぐいぐいと飲んだ。

「痴、どいつもこいつも、承知しないぞ、痴」

壮い婢は恐ろしそうにしてこそこそとどこへか往ってしまった。