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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

同時に広巳の刀が頭の上に閃いた。岡本は逃げ走った。

「逃がすものかい」

広巳は悪鬼のようになって追っかけた。定七も広栄もどうすることもできなかった。

「たいへんだ、たいへんだ、何人か来てくれ」

「広巳、広巳、そ、そんな」

「あれ、あれ」

「何人か来てくれ」

岡本は玄関の方へ逃げる隙がないので、奥との境になった襖を突き倒すように啓けて逃げた。

「くそ」

広巳も夢中であった。奥の室へ入った岡本は、今度は縁側の障子をこれも突き倒すように啓けて裏庭へ出た。裏庭には柿や梨の木が植わっていた。風はますます吹きつのって、その柿や梨の木を掻きまぜていた。

「くそ、逃がすか」

広巳を追って出た定七は、そこでも大声かけた。

「たいへんだ、たいへんだ、何人か早く来てくれ」

それと知って二人の婢も裏庭へ顔を出した。

「あれ、あれ、たいへん、たいへん」

「あれ、あれ」

岡本は果樹の間から出て土蔵の方へ走った。広巳はどこまでも追って往った。定七や婢が後から来て叫んだ。

その時右の端の土蔵の口が内から啓いて、お高と小厮の平吉がひょこりと出て来た。広巳の体はお高の前にあった。夢中になっている広巳の眼にもすぐお高の姿が映った。