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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
「姨さん、もう寝たの」
と、落ちつきのない声をかけながら障子を啓けた。内には老人夫婦がこっちの方へ頭をやって寝ていたが、二人ともまだ睡らないで、老人は腹這になって新聞を読んでいた。老人はちょっと顔をあげて眼鏡の上から上眼で政雄の顔を透すようにした。
「お入り、今しがた、横になったところだ」
政雄はもう後を閉めて室の中に入り、老人の左側に寝ている老婆の枕頭になった長火鉢の傍へ往って坐ったが、己の傍に何物かが来ているかのようにきょときょとと身の周囲に眼をやった後に、室の中をまたきょときょとと見まわした。
「何かあったかね」
政雄の挙動に不審を抱いているように老人が云った。
「な、何もないさ」と、政雄は小さな声であわてたように云った。
「でも、へんだね」
「どんなにへんだろう」
「何かあったのじゃないか、また、自動車にでも乗ってて、人でも轢いたのじゃないかね」
政雄は自動車の運転手をしていたところで、ある夜人を轢いたので、病院へ伴れて往くと云って、車は助手に運転さして前に帰し、己は怪我人を人通りのすくない処へ伴れて往って撲りつけ、その場はうまく逃げていたのを捉まって、免許状をとりあげられているものであった。