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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
政雄は蒲団から頭を出すことができなかった。
大きな長い舌の女、細面のその女の顔は、袴を穿いて風呂敷包みを持った女学生か事務員のように見えていた。宵の口に襲おうとした女とつながって来た。政雄は己の傍にはもう宵の口から怪しいものがつきまとっていたと云うように思いだした。政雄は老人夫婦の傍にいる時には、怪しいものに対する恐怖と罪悪の露見に対する恐怖で混惑していたが、何時の間にか罪悪に対する恐怖は無くなって、怪しいものに対する恐怖ばかりになっていた。大きな長い舌は政雄の頭をせめさいなんだ。
政雄はそのうちに便所に往きたくなって来たが、蒲団の外に大きな長い舌がだらりと垂れているような気がするので、蒲団から顔を出すことができなかった。政雄は朝まで我慢しようと思ってこらえながら、早く夜が明けてくれれば良いがと夜の明けるのを待っていた。そして、その苦しみのうちにうとうととしていると、貨物自動車であろう大きな響をたてながら車が通って往った。毎朝聞きつけている青物市場に往く青物を積んだ自動車なら五時比であった。青物の自動車が通れば朝の早い下の老人が間もなく起きることになっているので、政雄はやや人心地がつくとともに小便の苦しみがもうたえられなくなった。