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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
と云ってから、今度は妻室に向って、
「ずっとあがってお貰いするのが好いだろう、お前は、小供の機嫌をとってお出で」
と云った。妻室のまだ何か云う声が、小供の泣き声の中へ神経をいら立たせて聞えた。そして、小供の声は奥のほうへ往った。私は客がコートでも脱いでいるのかと思って、ちょと待っていたが、なかなかあがって来そうにないので、
「さあ、さあ、どうぞ、何人も他に遠慮する人はおりませんから」
と、云ったがそれでも返事がないので、もしかすると便所にでも往ったのではあるまいかと思って、火鉢の傍へ帰って待っていた。そして、ちょと待ったが、まだなかなかあがって来そうにないので、煙草をつけて喫んでいると、やっと跫音がしはじめた。泣きやんだ小供に乳を飲ませている妻室であった。
「お客さんは」
と、妻室が不審するように云うので、
「お客さんって、俺もちっとも来ないから、待っているのだよ、便所へでも往ったのじゃないか」
私も不思議でたまらないから、妻室に突かかるように云った。
「なに、すぐおあがりになりましたから、私は坊やの機嫌をとっていたのですよ、どうしたのでしょう」
「たしかに二階へあがったのか、おかしいな」