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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
それは己の下宿のすじむこうの雑貨店の二階から裁縫学校へ通っている小柄な色の白い女であった。朋友は活動を見ている女とどう云うようにして近づきになったのであろうと考えながらその眼を左のほうへやった。そこは活動写真館の前の河縁でその町の名物の一つになっている牡蠣船の明るい燈があり、二つになった艫の右側の室の障子が一枚開いて、壮いな婢の一人がこちらのほうへ横顔を見せて銚子を持っていたが、客はこっちを背にして障子のかげに体を置いているので、盃を持った右の手さきが見えているのみで姿は見えなかった。牡蠣船の前にはまた小さな使者屋橋と云う橋が薄らと見えていた。
岸の柳がビロードのような嫩葉を吐いたばかりの枝を一つ牡蠣船のほうに垂れていたが、その萌黄色の嫩葉に船の燈が映って情趣を添えていた。秀夫はその柳の枝をちらと見た後でまた眼を牡蠣船のほうへやった。壮い※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な婢が心もち赧らんだ顔をこっちに向けてにっと笑った。それは客と話をして笑ったものであろうが、己の眼とその目がぴったりあったように思って秀夫はきまりがわるいので、ちょと牛肉屋の二階のほうへ眼をやった。