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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
な婢は琵琶を持っていた。そして、澄んだ鈴のような声で歌っているらしかったが、声が小さいので聞えなかった。それでは朋友の琵琶を聞かされたと云うのはあの女であったかと彼は思った。
そのうちに女はまたこっちを見た。紅い唇がありありと見えるようにおもわれた。今晩はしかたがないから明日の晩は夕飯を喫わずに往って見ようと思って彼は懐の勘定をした。懐には十円近い小遣があった。西洋料理を一皿二皿喫ってビールを一本飲むくらいなら三四円もあればよいだろう、と、彼は朋友と西洋料理に往った時の割前を考えだしていた。
翌日秀夫は銀行へ往って課長の眼の無い隙を見て、牡蠣船へ往ったと云う朋友にそれとなく牡蠣船の勘定などを聞いていたが、その夕方下宿へ帰って来ると、湯に入って夕飯は喫わずに日の暮れるのを待って出かけた。そして、新京橋の上へ来てみると牡蠣船は艫の左側の室の障子が開いて客らしい男の頭が二つばかり見えていた。
秀夫は今晩こそ往くと云う彼にとっては一つの決心をしているので、昨夜のように胸さきに垂れさがっている幕のような物の圧迫もなかった。彼はその足で牡蠣船の階段をおりて狭い電話室のくっついている入口へ往った。