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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
彼は琵琶の音はしないかと思って耳を立てたが琵琶は聞えなかった。彼は婢に西洋料理とビールを註文して、婢が出て往くと起って往って境の襖の間を軋まして、その隙から覗いてみた。そこには乾からびた眼に潤みのある婢が銚子を持っていた。
「何を覗いていやはります」
「琵琶が鳴っているように思ったから」
秀夫はそう云い云い食卓の前へ坐った。
「※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な姐さんを覗いていやはりましたか、さっきまで弾いていやはりましたが、やめました」
「今、むこうから見ると弾いていたようですが」
「それはさっきだすやろ」
「おかしいな」
秀夫は時間の距たりが不思議であったが、それは婢の思いちがいであろうと思った。そしてな女がいなければ別に飲み喫いはしたくないので一時間ばかりで出て来たが、※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な女のことが気になるので新京橋の上へ往くとまた揮り返って見た。艫の右の室には※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な女が姿を見せていたが琵琶は持っていなかった。彼は釘づけにされたように立ってその女の方を見つめた。
秀夫はふとまだ他にちがった婢がいて、己等のようなふりの客の処へは出ずに、金を多く使う客の処へ出ているかも判らないと思いだした。