輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
藤の瓔珞
※(ローマ数字1、1-13-21)
※(ローマ数字1、1-13-21)
憲一は裏庭づたいに林の方へ歩いて往った。そこは栃木県の某温泉場で、下には澄みきったK川の流れがあって、対岸にそそりたった山やまの緑をひたしていた。松杉楢などの疎に生えた林の中には、落ちかかった斜陽が微な光を投げていた。そこには躑躅が咲き残り、皐月が咲き、胸毛の白い小鳥は嫩葉の陰で囀っていた。そして、松や楢にからまりついた藤は枝から枝へ蔓を張って、それからは天神の瓔珞のような花房を垂れていた。
(いいなあ)
憲一は足をとめた。
(こんな処にいると、帰るのがいやになるぞ)
憲一の眼には汚い四畳半の下宿が浮んで来た。拓殖大学に通っている憲一は、小石川の汚い炭屋の二階に下宿しているのであった。
(汚いって、お話にならないや)
何年か表がえをしたことのない、真黒くなって処どころに穴のあいた畳のことを考えてみた。
(いくら汚いたって、あれじゃやりきれないや)
どこからか一羽の蝶が来て、ひらひらと皐月の花の上を飛んで往った。
(とにかく、いい処だ)
憲一はもう汚い下宿のことも忘れていた。林は奥へ往くにしたがって、躑躅と皐月が多くなった。