輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《松のや露八(まつのやろはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 頁

青空文庫

板新道の家へ――」

息が、耳に、熱かった。

「ウム」

「きっと」

「うむ……」

「妹に、気がねなんか、いりやしない。お里だって……ほんとのこというと、榊原健吉の、お妾みたいなものになってるんですからね」

「あ……そうか」

「一番下のお喜代にだって、いま、旦那の話が持ちあがっているし……淋しいのは、私だけ、私だけが、ひとりぽっち」

欄干にある庄次郎の手へ、お蔦は、胸を押すようにして云った。乳ぶさのやわらかな肌のぬくみが、うすい単衣はないように、ぴったり、彼の手を抑えつけていた。

だが、庄次郎は、なぜか、お蔦の髪や肌を感じながら、心では、お喜代の愛くるしい眸や、唇や、白い顎を描いて、かすかな水音のする深い闇の底から、あの疋田鹿の子が、うかび出してくるように、うっとりしていた。

「じゃ、また、そのうちにね」

「あ……」

庄次郎は、びっくりして、頬へ手をやったが、お蔦の熱い唇は、もうかなたへ飛び離れて、笑っていた。

「左様なら――」

橋板を鳴らして、彼女は、小走りに、行ってしまった。

「ちッ……」

袂で、頬をこすったが、お蔦のにおいが消えなかった。二十七にもなって、まだ、清童である彼の潔癖が、忌々しげに、