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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《松のや露八(まつのやろはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 頁
三
二、三の者へ傷を負わせたのは確実だが、同時に自分も撲られたり掠り傷に染まっている。のみならず、敵はあり余る手にまかせて、小石を拾ったり、雑草を根こぎにして投げつける。そのうちに庄次郎は、肩から両腕、棒のような凝結に、刀の重さがこたえて来るし、口は鞴みたいに渇いた呼吸を大きくする。
三
(斬れない)
と思った途端に、刀は鉛のように重たいばかりの物だった。ひょいと、逃げ口を振り向いた隙に、くそ度胸のある敵の大刀が真っ向へ迫った。ぱしッ! と刀の刃のこぼれる光に自分の眼を射られて、
「くそッ!」
夢中で揮り下ろした刀に異様な手ごたえがした。蒲団を撲ったような反撥を腕に感じた途端に、庄次郎は生まれて初めて、人間の生血を自分の刀から噴騰させて、鼻先から花火でも揚がったように、
「わッ!」
と、驚異とも、凱歌とも、つかない声を発した。
「や、殺られた――」
上辷った声が、さっと、後ろへ退いたとき、庄次郎の丸ッこい体が、横ッ飛びに、原を駈けていた。だが、突き当りに、寺の垣があって、咄嗟に越せなかった。後ろからは、肉へ尾いてくる野良犬のように、
「先へ廻れッ」
「石をぶつけろっ」