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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《松のや露八(まつのやろはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 頁
「二人で、ご神燈でもかけるのに。……だけど、これからだって」
「ああ」
横になって、手枕をかいながら、
「俺も、人間が、変わったなあ」
しみじみ、自分の姿へ、眼を落としていた。
と――階下で、
「いや、いるっ」
大声が聞こえた。
あわてた内儀さんが、何か言い訳するのを圧してがんがんと、響くのだった。
「確かにいることを、見届けてきたのだ。――荻江の三味線が、洩れていたのが証拠、それに下駄もあるっ。かくすと、承知せんぞッ」
「あっ、兄さんが」
お蔦は三味線を捨てた。
庄次郎は、刎ね起きて、
「健吉」
「そうですよ、健吉が妹へ買ってやった着物だの、髪の物だのを、私が、みんな七ツ屋へ運んでしまったから、怒って来たのかも知れない」
「そ、それは」
「あわてたって、しようがない。庄さん、度胸を、おつけなさいよ」
「つけて、どうする」
「勝手におしと、二人で、首を並べちまうのさ」
「いけねえ、榊原健吉とくると、俺は、苦手だ」
物干へ、逃げ出そうとすると、ど、ど、ど、とあらっぽい跫音が梯子段を躍って、
「逃げると、尻を斬るぞっ」
庄次郎は、物干の上へ、坐ってしまった。お蔦はと見ると、いちど捨てた三味線を膝へ拾って、