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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《松のや露八(まつのやろはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 頁
二
「そう願えれば、結構」
「今、お住居は」
「やはり、平岡円四郎殿の邸内に、匿われておる」
「ははあ」
ちょっと、彼の眼が、渋沢の顔を正視した。渋沢は、その眼に答えて、にやりと笑った。
二
「庄どん。――お帳場さアん」
女中が、中庭から呼んでいた。
庄次郎は、あわてて、
「では、いずれまた」
「自分も帰る」
同時に、渋沢も立った。
「諄いようだが、あの書付が、幕吏の手にわたると、迷惑いたす者が幾人も出る。どうか、相違なく、お届けねがいたい」
「承知しました」
渋沢を、庭口へ送り出すと、庄次郎は、あたふたと、帳場へ戻って、算盤を持っていた。
すると、主人の小倉庵の長次が、どこで見ていたのか、こんなことを話しかけた。
「土肥さん」
「はい」
「桐壺から今帰った客は、渋沢栄一という田舎侍じゃねえか」
「そうです」
「おめえも、同類じゃねえか」
「えっ。どうして」
「渋沢という男は、勤王浪人の尾高東寧や、その他の百姓侍と計って、高崎の城に、夜討をかけ、軍資金を集めて、討幕の旗挙げをしようとしたことがバレて江戸へ逃亡した野郎だ。武州の榛沢村から、俺の手へも、廻状が来ている」
小倉庵は、阿部閣老に取り入っているし、また、兄弟同様にしている鈴木藤吉郎は与力を勤めているし、そんな関係から、料理屋の亭主ではあっても、小梅村での十手預かりだった。