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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

葛籠の紋やふろしきの染め抜きを見ると、これは、今夜の火事を出した火元とか噂をされていた田舎廻りの旅役者、岩井染之助一座の河原者と思われる。

すると、今。

岸に着いてゴッタ返しながら、荷物をあばき合っていた河原者の舟で、

「あれッ、あれッ、どなた様か、そこへ流されてゆく者を助けて下さいませ」

と、鬘下地の女形らしいのが、金切声を上げました。

見ると、折わるく一番瀬の早い淵へ、誤ッて落ちた者があるらしく、あれよというまに、水に巻かれた人らしいものが、渡船場の杭を外れて下流へ押し流されてゆく。

岩井一座の小屋が火元だという土地のうわさが、初めからパッと広がっているので、自然と憎しみを持つものか、それとも自分達のことで他を顧みている気持が起きないのか、たれもそれへ手を出す者がない様子。

ひとり、駆け出したのは金吾です。

急流とはいえ、陸を駆ける足どりは、すぐに流されてゆく者を追い越します。彼は、蛇籠の崖縁から川洲へ飛び降りて、瀬の狭くなる流れ口に足を踏み込み、いきなり、そこへ見えた黒いものをつかみました。

「ああッ……」

と、水の中から、人魚の泣くような声。