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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
――けだし、世間に奇事が起ると奇観も生じる。まことに、稀代な眺めだった。
「嘘をいうなよ」
「知っておる顔を、知らぬなどと申して、後に分ると、おまえたちも同罪だぞ」
彼女らの前を、数珠つなぎにした多治見の家来や土岐の召使が、面通しのために、何度も曳かれた。
不運な籤が、七人に中った。遊女らから「――知っている」と、指された顔の持主である。彼らは哀号して、非を叫んだが、ただちに拷問の白洲へ廻されて行った。そこで、何か泥を吐いたか、吐かぬために、打首となってしまったか、これらの人間については、処罰の程もわからない。
もっとも、六波羅当局としては、これらの枝葉に属する小者の取調べなどには、そう重点をおいてはいない。
より重大な、未解決のものが、その日まだ、手入れも出来ず、措かれてあった。
一味の公卿の門である。
誰々と、名も居る所も、明白に分っていたが、朝廷の臣である、しかもみな後醍醐の寵臣なのだ。討手の勢を踏み込ますわけにはゆかない。手続きが要る。
しかし六波羅も、これには本腰だ。朝廷への申し入れは、手続きなどという形式のものではない。洛中諸所に軍兵を布き、示威のかたちをとっている。